第2話:かわいいイメージ

”オートザムオリジナルのキャロルが欲しい!という Mr.H氏の依頼を受けた私たちの最初にする仕事は、まずデザインの方向性を決める事であった。

ここで、ムークのデザインの受け方のパターンを軽く説明しておきます。

〈パターン1〉 デザインのみ受ける・・・イラストだけを書く
〈パターン2〉 モデルまで作る・・・クレイモデル(粘土)
〈パターン3〉 モデルまで作る・・・木型モデル
〈パターン4〉 モデルまで作る・・・モックアップモデル(ほぼ実物と同じモデルを作る)
〈パターン5〉 製品まで作る・・・FRP以外にもメーカーと同品質のものも制作する。

普通は、ムークの名前が世の中に出る事はありません。雑誌に載っているものの中にも結構ムークのデザインのものがあるんですよ。
ここだけの話ですが、メーカー&ディーラーオプション品なんかもあります。
(右上の写真は、このまえ雑誌の広告欄に乗っていた『セレナ』のエアロパーツです。)
今回 Mr.H氏から受けた仕事は 〈パターン5〉 で、メーカーレベルの製品を供給して欲しいということであった。

さて、デザインの話に戻す事にしましょう・・・・
スポーティータイプやアメリカンタイプそしてジープタイプなどいろいろありましたが、最終的に候補に残ったのが、”クラシックタイプ”と”かわいいタイプ”の2案のスタイルでした。右にイラストを載せておきましたので、参考にしてください。
(実際は何十枚も絵を描き、その中からいいものを選びます。)

☆クラシックタイプは、品があって結構ベース車のライトと合っています。
☆かわいいタイプは、見てのとうり 『旧キャロル』 をイメージしたものです。

かわいいタイプのデザインは、かなり悩みました。うちのチーフデザイナーMr.Mの白髪が増えていくのが、目に見えるようでした。
「悩んだ割には結局昔のまま」 だって。それだけ昔のキャロルががいいデザインだったってことですよ。
かわいく見せようとすると、愛敬にある動物のイメージにする事になります。
例えば・・・・
○旧キャロル : カエルのイメージ
○ヴィッツ : リスのイメージ
旧キャロルのデザインに似せたもう一つの理由は、この車がオートザム専用で売られる事でした。
オートザム=キャロルぐらいのイメージがあったムークとしては、この車にも昔のイメージを持たせるせるべきだと考えたのです。

さっそくMr.H氏のもとへ飛行機で向かいデザインの最終確認を取り、”かわいい”案でデザインを進める事に決定したのであった。

…次回に続く